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なべて余はこともなし

昨夜、私は4キロ半のマシュマロを食べる夢を見たのだが、目を覚ましたら、枕がなかった。(トミー・クーパー)

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日記

ワールドグランプリが閉幕しました。決勝ラウンドの最終日、日本は中国にストレート負けし、1勝4敗で五位に終わりました。

女子バレーもいまや身長190センチが珍しくない世界です。その体格差という圧倒的なまでの不利を前にして、日本は粘りとスピードを身上にした拾ってつなぐコンビバレーで大健闘しました。確かに北京のメダルへの道はまだまだ険しそうです。でも、決して勝負にならないわけではありません。これがいちばんの難題にせよ、もう少し決め手が増せば活路は開けるはずです。

この大会ではカオル姫こと菅山かおるというスターが彗星のごとく誕生しました。彼女の清楚な顔立ちと169センチの小さな体からは想像も出来ないガッツあふれるプレーは、今大会の日本バレーを象徴しているようで、清々しく感動的でした。しかし、そんな彼女のプレーを追いながら、わが脳裏にまざまざと甦ってくるものがありました。菅山さんと同じく東北の出身の、わが心の恋人だった人・・・

山内美加さん。

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お元気ですか?

現役を辞められてから、もうどれほどの歳月が流れたのでしょう。いまや女子バレーでも当たり前になったバックアタック。あなたはその先駆者的な存在でした。躍動感あふれる美しいフォームから繰り出される強烈なバックアタック。たまたま付けたテレビではじめて見た時の衝撃は今も忘れません。

その瞬間から、あなたが所属したダイエーオレンジアタッカーズの試合を熱心に追いかける日々が始まりました。あなたが全日本のメンバーとして活躍された93年のワールド・グランド・チャンピオンズ・カップ(グラチャン)のペルー戦のビデオはテープが擦り切れるほど見たものです。比喩ではありません。実際、擦り切れました。

あなたのグラビア記事が載っているバレーボール雑誌も必ず買いました。それまで格別バレーに関心があったわけではありません。おまけにイケ面の男子選手のグラビアも多いアイドル雑誌のような作りです。その雑誌を読んでいる現場を家人に見られた時はさすがに説明に困ったものです。

あなたに魅了されたいちばんの要因は試合中におけるあなたの凛とした無表情でした。得点を上げた時にも喜びをほとんど表に出さず、だって喜怒哀楽を表現するなんてはしたないわと言うことさえはしたないわと言っているかのような、あくまでも闘志を内に秘めて黙々とプレーする姿は「美」以外の何ものでもありませんでした。

ただ、折りしもあなたの現役時代は世界に誇った日本バレーが下降線をたどり始めた頃でした。キューバのルイスやら、ロシアのアルタモノワやら、中国のソンゲツやら錚々たるスパイカーを相手に日本は苦戦し、あなたのバックアタックも決まらないことが多々ありました。そんな時でもあなたは悔しさや苦しさを表に出さずあくまでも凛とした無表情のままプレーを続けました。その禁欲的なまでに自己を貫く姿を目にして、こちらの方が胸を締めつけられる思いがしたものです。

そんなあなたの姿を見てからというもの、僕も慎しみと抑制を旨に生きていこうと心に誓ったものです。

あなたは脚光を浴びるということに対しても控え目でした。きっとチャラチャラした世界が嫌いだったのでしょう。あなたほどの美貌があればマスコミからも引く手あまただったはずなのに、現役を引退するとほぼ同時に元プロ野球選手の男性と結婚し、あっさりと家庭の人になってしまいました。その引き際の鮮やかさもまた余りにもあなたらしく、何故かそれほど淋しい思いをしなかったことを覚えています。

風の便りで、いまもアマチュアバレーを楽しみながら、子育てに頑張っていることを知りました。きっと今回のワールドグランプリも手に汗を握りながらも、後輩たちの頼もしい活躍をテレビでご覧になったことでしょう。柳本ジャパン、確実に強くなっていますよね。カオル姫のバックアタック、惚れ惚れしました。

でもその姿に、僕はあなたの懐かしいプレーが二重写しになって、ひととき胸を締めつけられる思いを味わったのです。

山内美加。日本女子バレーボール界初の華麗なるバックアタッカー。

陰ながら、いつまでも幸福であられるようお祈りしております。