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なべて余はこともなし

昨夜、私は4キロ半のマシュマロを食べる夢を見たのだが、目を覚ましたら、枕がなかった。(トミー・クーパー)

WBC、王JAPAN世界一に!

野球

日本時間3月21日11:00、カリフォルニア州サンディエゴ、ペトコ・パーク。劇的な、あまりにも劇的なWBC・決勝戦が始まった。

キューバの先発投手の自滅で日本が4点を先制、試合の主導権を握る。松坂もその裏、先頭打者に本塁打を許す。球も荒れ気味。それでも、4回まで最少失点で切り抜けた。

まだ球数に余裕はあったが、王監督は5回、スパッと渡辺俊介にスイッチする。ただ、敵はドミニカを破ったアマ球界無敵の王者だ。

野球が普及したのは1860年代。米国の影響下にあったから、日本より早かった。1878年には最初の選手権が行われたと言う。なるほど強いわけだ。日本は対キューバ戦、4勝32敗。

このまますんなり行くことはないだろう。果たして、6回にセンター返しの集中打を浴びる。これが優勝の重圧なのか、7回は球が手に付かない。川崎、渡辺と信じられないようなエラーが続発する。しかし、世界一低姿勢の投手は持ち味を発揮、二併殺を取ったのが大きかった。

8回、三番手の藤田が2ランを打たれ、1点差に詰め寄られる。ところが、こちらは思いのほか冷静に見ていた。一度死んだと思った身だ、怖いものは何もない。ファンとしても、そんな心境だったのか。選手は尚更か。

9回表、王JAPANの結実とも言うべき攻撃が繰り広げられる。金城が内野安打で出塁。川崎の送りバント三塁手の好守に阻まれるも、続く西岡が絶妙のプッシュバントを決める。
そしてイチロー。この人については言うべき言葉を持たない。あの自信満々ぶりが鼻につかないでもないが、クリーンアップに座ればしっかりとクリーンアップの責任を果たす(川崎の右手でのホームベース・タッチ!もあった)。ただ帽を脱ぐのみだ。松中敬遠で1死満塁。ここで監督は代打の切り札として温存しておいた福留を送る。

時計の針を二日前に戻す。

イチローをして「ボクの野球人生の中で最も屈辱的な日です」と言わしめた韓国戦に敗れた後、メキシコのおかげで奇跡的に転がり込んできた準決勝。いつもは沈着冷静なメジャー・リーガーが勝利への執念を前面に出したのは、日本の野球は世界に一歩も引けを取るまいという強い信念からだったのだろう。

しかし、三度目の韓国戦も苦戦する。先発・上原は期待通りの好投を見せるも、打線は走塁ミス、バント失敗を繰り返して一点が取れない。そんな重苦しい空気を救ったのが、7回、代打・福留の起死回生の2ランだった。思えば、福留の不振とこの一発が今大会での日本の戦いぶりを象徴していた。それにしても、いつ見ても福留の右越えライナー性の本塁打には惚れ惚れする。打った次の瞬間、空中に放たれたバットが描く軌跡の美しさをあなたは目に焼き付けたか?これで打線に火が付き、終わってみれば6-0の完勝。

恐らく韓国戦で雪辱を果たしたこの勝利が、今日の初回の4点につながったのだろう。そして、代打・福留はもちろん今日も貴重なダメ押しの追加点を叩き出した。これで勝負はあった。守護神・大塚がマウンドに上がる。最後は、キューバの次代を担うと言われるグリエルを空振り三振に仕留めた。

日本10ー6キューバ 

正しくワールド・シリーズと呼ぶべき大会で初代の王者に輝く。長島JAPANが果たせなかった悲願を王JAPANが達成したことにも、長いプロ野球ファンとしてある種の感慨を禁じえない。

「この日、日本の野球が世界の野球になった」(長島茂雄・談)

宴の後。もう終わってしまったのか。いま振り返ると、あっさりとキューバを倒したようにも思えてくる。それだけ、この大会が波乱万丈だったからなのだろう。誤審騒動、組み合わせ、ルール面で、多くの物議を醸した。しかし、問題の所在は明らかだ。誰の目にもフェアな試合環境を整えること。そうすれば大会の権威も上がる。何より野球の世界への普及にもつながるだろう。それでも十分に面白かった。終わってしまったことに一抹の寂しさを感じるほどだ。

でも、4年に一度ぐらいがいいのかもしれない。当分、日本野球が世界一なのだと誇れる嬉しさを味わえる。

主にイチローと福留を取り上げたが、上原が投げた、渡辺が投げた、松坂が投げた、松中が打った、多村が打った、里崎が打った、宮本も打った、西岡が走った、小笠原が守った、川崎が守った・・・・・そして、世界で日本は勝ったのだ。

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